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2022-04-20 16:54 | カテゴリ:ブログ
春、4月となりました。救命センターへと続く桜並木もだんだんと色づき…、ヘリ倉庫の端が…。いや何でもありません。とにかく4月になりましたね。
見習のまま一旦ブログを卒業させて頂くことになりましたブログ担当見習Nです。

4月と言えば卒業から入学の季節、北総でも人の移動がありました。ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。
と、いうように、昔から当たり前のことなのですが、寂しくないといえば噓になります。

さて、私個人的な話になりますが、お世話になった3年間を少し振り返ってみたいと思います。現時点で酔っているかどうかは置いておいて、そのようなテンションで書いていることはご理解ください。
そういえば、北総にはじめて見学に来た日、ヘリは運休でした。救急外来も穏やかでした。院内で買っていただいたコーヒーに大量の砂糖を入れてサッカーとバスケットボールの話をしていたら、北総に入ることを決めました。
北総ではじめて勤務をした日は、緊張で何も覚えていません。
はじめて当直をした日、重症の方がたくさん運ばれてきました。医局長と当直でした。急いでドレーン(※多少の語弊はありますが、救命に必要な管の一種です)を入れてと言われました。出来ません、と言いました。じゃあ急いでシース(※語弊はありますが必要な管②です)を入れてと言われました。出来ません、と言いました。そしたらじゃあ急いでバスキャス(管③)を入れてと言われました。見守ってくださればやれます、と言いました。いつも笑顔の医局長の顔が、真顔になっていくのを見ました。辛抱強く育てて頂いてありがとうございます。
そうです、初期研修医の皆様。3次救急に慣れていなくても北総で働くことはできるのです。
入職して1カ月後からドクターヘリにも乗りました。私がヘリ当番になると、ヘリは飛んだり飛ばなかったり、飛ばなかったりキャンセルになったり、故障したり雪が降ったりしました。何故でしょうか。ヘリでの医療は地上とは全く違うものに見えました。ものがない、情報が少ない、人が少ない、時間が短い、場所が狭い、選択肢が多い、状態が急変する、天気に左右される。一つとして同様のミッションはありませんでした。
病院で医療をすると、治療の手段を選択することができます。ヘリでの医療は治療する場所自体を選択することができます。場所を選ぶということは、治療の転帰に直接影響することになります。「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というピーター・パーカーのおじさんの言葉が脳裏をよぎりました。
まだヘリ活動について知らず、ドクターヘリやドクターカーを受ける立場だった時、私自身は正直他病院のヘリ活動については良く思っていませんでした。わざわざ現場に行っておいて治療もせずに点滴だけ取って送ってくるのかと、場合によっては何もしないで送ってくるのかと、そう思っていました。立場が変わると、治療介入はせずに搬送を優先した、点滴さえとらなかった判断はすごいと思うようになりました。掌返し、井の中の蛙、青天の霹靂、無知の知。先人の言葉が少しずつあてはまるような状況でした。
警察や消防の方、オリンピックの方々と働く機会も頂きました。目の前の一人の健康を最優先とする、という暗黙の見解も、時と場所と状況次第では変わることがあることを知りました。
色々な領域が、あと50年でAIにとって代わられるといわれる時代になりましたが、北総で学んだ一番大きなことは、最後は人が、そして人同士の関係が大事ということかもしれません。例えば、ヘリで多数傷病者の診療をするとき、時間がかかる超音波検査よりも、自分の手で行う診療が最も頼れるということがあります。ミッションを円滑に進めるのは、無線機や携帯よりも会話による情報共有であることがあります。

ただひたすら過ぎさってゆくもの、飛びたつドクターヘリ、年齢、春、夏、秋、冬。
お世話になった期間も驚く早さで過ぎ去りました。
自分で読み返しても脈絡のない文となりましたが、することもなく手持ち無沙汰なのにまかせて一日中パソコンに向かって、心の中に浮かんでは消えていくとりとめのないことを、あてもなく書き付けていると、異常なほど、狂ったような気持ちになるものですね。ということで、数々の無礼をお許しください。

さて、今後の当ブログは次の担当の方へ引き継ぐ形となります。ここまで読んで頂いた皆様には感謝の言葉もありません。
それでは皆様、いつの日かまたお目にかかれることを楽しみにしております。そして北総救命の更なる発展と地域の皆様のご健康をお祈りしております。
最後になりましたが下手な引用をお許し下さった清少納言様、鴨長明様、吉田兼好様に心より感謝申し上げます。
2022-03-19 15:31 | カテゴリ:ブログ
御無沙汰しております。皆様お過ごしでしょうか。
前回更新から早5カ月程度が経っており、年を経るごとに時の流れの速さを感じています。
…どう頑張っても、更新できなかった上手い言い訳が出来そうにないので本題に入ります。

突然で恐縮ですが、本日19時よりインスタグラムにて、本年度最後のライブ配信を行います。
本年度を持って一旦北総を離れる先生方も出演しますので是非ご覧ください!
2021-10-05 16:46 | カテゴリ:ブログ
皆様こんにちは。ドラマが終わった余韻に浸りすぎて更新が遅くなってしまいました。嘘です。野暮用に次ぐ野暮用にかまけて更新が遅れた野暮な管理人見習です。

それでは、月9ドラマ「ナイト・ドクター」第11話をみた感想を述べさせて頂きます。
当ブログでは初見でドラマを見た(あくまで個人の)感想(見解)を、徒然なるままに(ほろ酔い気分で)書かせて頂きます。皆様におかれましては半信半疑で覗いていただけましたら幸いです。
(※注:以下ネタバレが多分に含まれますのでドラマ未見の方は先にドラマをご覧ください)

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第11話「突然の解散宣言! 5人が出す答えとは」
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本郷先生から突然告げられたナイトドクターチームの解散。朝倉先生のモノローグ「突然告げられた、解散という現実。私たちは心の整理もつかないままに、その日もただ現場に向かった。」

勤務形態にもよりますが、医者は比較的異動が多い職業だと思います。特に医局などの何らかの組織に属する病院勤務医は、突然異動が決まることがあります。さらに若いなかなか次の勤務先が確定しないことがあります。次の月の勤務先が決まらない知り合いもいます。関東に家族がいて突然東北への移動が決まった知り合いもいます。もちろん、そこまで含めての就職先選びなのですが、臨機応変さが求められます。というわけで、同じ病院に長く務めるという人は決して多数派ではないと思います。
ちなみに、病院が変わる、というのは周りの人が変わってしまうということ以外にも、かなりの違いがあります。そもそもの医療が全く違うのです。使う薬剤も、使う器具も、手続きも、医師の仕事の範囲も何もかも違います。極端に言えば常識が変わります。もし医療関係者の方がいれば、移動してきた医師はこんなこともわからないのか、と思ったことはないでしょうか。それはたぶん、その人に常識がない(のかもしれませんが)というより、違う常識のところから来たんです。何が言いたいか?そうです、みなさん優しくしてくださいねということです。

5回のトイレで倒れている患者を発見した桜庭先生。急いで救急外来の新村看護師に連絡して応援を要請し、ストレッチャーを持ってくるよう依頼する。

院内で急を要する患者さんが発生した場合には、予め病院ごとに決まったルールに基づいて医療スタッフが招集されます。北総病院の場合には全館放送がかかり、原則としてそれを聞いた(お取込み中でない)すべての医師が駆けつけます。すごくお取込み中でなければ、今やっていることを中断して走って向かうので、ヌーの大移動みたいになります。実際に見たことがある方はびっくりされるのではないでしょうか。
そして原則階段を使用することが多いので、例えば1階から最上階に向かおうと思ったら、運動不足の私はもう大変です。もちろんたどり着いたころに急変した患者さんより呼吸数が早い変な感じになるので涼しい顔をして診療にあたる必要があります(※個人の感想です)。通常、救急系(救急科、集中治療科など)の急変対応に慣れた医師が到着するまでは、早く着いたものがリーダー役を務めます。医者なり立ての頃は、急変対応を学びたいという思いと早めに着いたらどうしようという気持ちでポジショニングは天に任せていました。

エスカレーター点検中に転落した患者さんを診察中の高岡先生。「右胸郭に轢音と皮下気腫…ほかに痛いところありますか?」しかし、直前まで話せていた患者さんの意識状態が急激に悪くなり、反応がない状態に。

このシーンの描写、直前まで話していたのに意識状態が急に悪くなる、というところはかなりリアルですね…。特に外傷ではこういうことがありがちなので、特に状態が不安定な初療の際は意識状態をこまめに確認します。
さて若干話がそれますが、個人的に医者になって一番の弊害だと思うことは、ドラマや映画、アニメなどで誰かの状態が急変する、もしくは亡くなるシーンにおいて、その際の描写にリアリティがないとちょっとさめてしまうことです。人がなくなる場面というのはフィクションであってももちろん見たくはないですが、ストーリー上大事な場面であることが多く、そんな時にふと現実にかえってしまうことはなんとも言えない悲しみがあります。
明らかに致命傷なのにそこから覚醒して敵を数十人なぎ倒してからカッコよく退場する、もしくは逆に見るからに強そうだったのに主人公側の軽い蹴りで全く反応がなくなるシーンを見ると、「これは医学的にどうなのか」と偉そうに言ってくる悪魔の自分と「典型的ではないけどあり得ないことではないからストーリー上気にしないほうが良い」と諭す天使の自分に挟まれ、結局はその時間集中できないため悪魔vs天使は引き分け試合となっても勝負には負けることがほとんどです。私と同じ悩みを持つ全国の医療従事者(そんな人いるかわかりませんが)のため、主役級急変時医療シーン検討制度の導入を検討いただければと思います。(誰に向けてのお願いかは未定です)

トイレで倒れていた患者さんの診察をする桜庭先生。エコー検査を行い、「心嚢内に液体貯留…心タンポナーデだ…」

心タンポナーデとは、ざっくりと言えば心臓の周りに液体が溜まることによって心臓が十分に膨らめないため血液を送るポンプとしての機能が果たせない状態です。ドラマのエコーでは、心臓の筋肉(比較的白く映る)の周りに液体(比較的黒く映る)が見えることで疑っていますね。これだけくっきりと見えれば迷いませんが、実際は多くが微妙です。ですので疑わしきは罰することになります。特に病院前(ドクターヘリ、ラピッドカーなど)の診療でのエコーは環境が整っていないため不確実であり、あると思ってないことや、ないと思ってもあることはあります。そのためにエコー検査は時間を変え人を変え行っています。

深澤先生とともに処置にあたる看護師の益田さん。処置内容と時間を手袋にメモしている。

細かすぎて逆に伝わってしまう場面ですが、あるものを有効に使う救急医療において手袋に情報を書くことは意外とあり得ることです。さらに、その手袋を間違って捨ててしまうところまでがワンセットです。

患者さんに時間がないことを察知し、現場での下肢切断に踏み入る深澤先生。一方で周りの同業者からは「おい先生、こいつの身体を何だと思ってるんだよ、ものじぇねーんだよ!」「他に方法はねーのかよ!歩けなくなったら、こいつはこれからどうやってやってくんだよ!」

これはこれは非常にやりにくいですね。こんな現場は一般的にはないと思います。どう考えても集中力そがれますよね…。もちろん患者さんの背景について全く考えない医者はいないと思いますが、緊急事態であればあるほど医療に集中した方が成功率が上がります。というわけで、救急車に乗ってきた御家族も病院に着いたらすぐに別の場所に案内されると思います。ドラマだとよく家族が処置中でもそばに行こうとして屈強な人たちに連れ去れる場面をみますが、あれだと患者さんの対応に集中できない結果にはなってしまうと思います。そうはいっても、自分が家族だとすれば気持ちはよくわかります。中で何をやっているかわからず初めて見る人たちに家族を任せる不安は大きいと思います。しかも家族に説明があるまでは結構時間がかかることが多く、救急車で受診すると何だかんだスムーズにいっても2時間前後かかってしまうことが多いですから、その間のご家族の心中は推して知るべしというより知るべくもありません。私たち医療関係者、患者さん、御家族、それぞれ互いを思い合い良い救急医療を作れればいいですね…。

下肢切断の際、ボーンソー(骨を切断するための機械)を使用中に白い粉のようなものが巻き上がっている。

細かすぎて第2弾ですが、骨を切断するシーンで、よく見ると白い粉のようなものが吹き上がっているのを見られましたでしょうか。確かに骨をボーンソーで切ると骨粉が巻き上がりますが、あれどうやって再現されたんでしょうか。小麦粉…じゃなさそうですが。

朝倉先生が電車に挟まれた患者さんの胸腔穿刺(ざっくり言うと、肺の外側に溜まってしまった空気を抜く(脱気させる)ことでしぼんだ肺を膨らませるための手技)を施行する。「脱気完了。これから挿管します」

脱気完了、の時に「シュー」という音は聞き取れましたでしょうか?気胸をドレナージ(空気を抜く)したとき、結構現場では脱気音がくっきりと聞こえることが多いです。もちろん聞こえない場合もありますが、聞こえるとほっとします。「シュー」が、「あなたは間違ってないよ」に聞こえます。そうですね、だいぶ盛りました。ですが、気胸の治療というのは、治療効果がすぐにわかるので治療の実感があるものの一つです。治療によっては入れた薬が数ヵ月、年単位で効果を発揮するものもありますから。

チェストチューブ(胸腔から余計な空気を抜くための管)を入れ終わった朝倉先生は、チューブの先をつなぐためのドレーンバッグを要求するが、現場には持ってきていなかった。考えた結果、手袋をバッグの代用として使用した。

さてこれは北総の外傷診療の宣伝みたいなシーンですね(監修の意図は違うと思いますが)。救急の病院前現場では物品が足りないことはよくあります。そこで北総救命のバイブル的な本では、手袋を切ることで一方弁(中から空気は出るが外からは入らない)のようにする方法を紹介しています。つまりこのシーンです。その本が宣伝として映り込んでいないか探しましたが、ありませんでした。当たり前でした。

朝倉先生が診療していた患者さんが救急外来に到着し、ナイトドクターチーム総出で診療にあたる。

朝倉先生が搬入してきたと同時にナイトドクターチームの一人ひとりが別々のことをやり始めます。これはまさに救急のチーム感が表れていて好きなシーンです。それぞれが「~します」や「~です」とやったこと、これからやることを声を出しながら全員に周知すると同時に記録担当に伝えています。実際にはいろんな声が飛び交ってさらにわかりにくくなりますが、全員に周知することは大事です。というわけで外傷診療をするためには大声を出せなくてはなりません。(適度でいいんですけどね。)もちろんこのチームワークはそれぞれがそれぞれのやっていることがわからないと上手くいきません。外傷センターが外傷センターたりえる所以ですね。

救助した患者さんがもっていたワイヤレスイヤホンをみた朝倉先生、「こんな小さなものでも何かの事故につながって多くの人を危険にさらしてしまうかもしれないんだよね。」「それを防ごうと毎晩たくさんの人たちが点検してくれてる。私たち以外にもいるんだよね、夜に働く人たちは。」

世界は誰かの仕事でできている、ってやつですね。普段はなかなかコーヒーは苦くて苦手なのですが、なぜだか缶コーヒーは飲みたくなる時があります。何故か納豆巻きが食べたくなるのと同じ理論でしょうか。そうですね、共感する人が1人でも入ればいいという精神でやっております。さて、ワイヤレスイヤホンからの列車事故というのは、風が吹けば桶屋が儲かるよりはよくありそうなので私も気を付けます。すごくどうでもいいですが、バタフライエフェクト、のバタフライというのはもともとはカモメであったというのは濃厚のようですね。サラダ記念日みたいですね。

離れ離れの病院に行っても5人でグループ通話するナイトドクターチーム。

仲が良いのがみてとれてファンの一人としては何よりです。そしてさらに、このグループ通話、医者同士で組もうとすると大体できません。うらやましいです。それだけです。

各施設で救急患者受け入れをしているナイトドクターチーム。朝倉先生「夜空に月がのぼる。それは私たちにとって戦いの合図だった。でも、今はどんな夜空も繋がっていることを伝えてくれる。同じ時代に同じ夜空の下。開けない夜はないと、胸を張って言えるその日まで。私たちは受け入れる。」

どんな空も繋がっている。別の好きなドラマの最終回で何度も再生したセリフを思い出してしまいましたが、5人ともつながっているというのはスケールが大きくてなんかいいですね。確かに、離れていても同じものを見ているというのはつながっている感じがしますね。それはさておき、各地に散らばったナイトドクターチームが確かに新たな芽を咲かせていると信じられるラストですごく気持ちよかったです。

戯言そのもののブログにお付き合いいただきまして有難うございました。ドラマは終わってしまいましたが、夜間救急医療は日本全国24時間365日続きます。このドラマを通じて救急に興味を持っていただける方ができたら現場のものとしてそれ以上のことはありません。(誰目線なのかは…模索中です)
もちろん北総救命の挑戦も続きます。今後も皆様と一緒に救急医療を支えていけたらと思っております。それではまた、酔いが醒めたらお会いしましょう。
2021-09-19 19:02 | カテゴリ:ブログ
皆様こんにちは。ご機嫌麗しゅう。
本日は、お金を下さいという御願いです。冗談ではなく比較的本気の御願いです。
期限は9月30日23時です。金額はいくらでも構いませんが、あと1300万円足りません。

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さて、こんなメールが来たらどうでしょうか。私なら迷惑メールフォルダの故障かなと思って削除してしまいそうですが、皆様はブログを削除せずに頂けると幸いです。そうなのです、今回のブログをまとめると最初の文になるのです。どういうことか言い訳致します。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、現在北総救命ではクラウドファンディングというものをやっております。
先日まで恥ずかしながらクラウドファンディングについてよく知らなかった私ですが、要するに実現には大きなお金が必要なプロジェクトを進める上で、その目的に賛同して頂ける同志から寄付を頂くことで大きな目的を達成しよう、ということです。
そして現在、多くの皆様から700万円ものお金を頂いており、目標まであと約1300万円程度という状況です。
はい、つまり世の中お金なのです。・・・とは言いたくはありませんが、少なくともこのプロジェクトについて集まるお金が全てものを言うようです。
そして一番のポイントは、目標金額に達しなかったばあい、既に頂いているお金はすべてなかったことになるということです。

目的はシミュレーション機器を購入することです。何じゃそりゃ、と思った方、私もそう思いました。
最近では外傷全体の数はやや減少傾向であり、経験できる機会も減っています。ですが、だからといっていざ患者さんが来たときにはじめて見たから上手くいかなかった、ではいけません。それを解決するのがシミュレーション機器というわけです。
外傷診療をしていると、後からカンファレンスで症例の振り返りをした際に、「直接見たわけではないから分からないけれど」という、枕詞がつきます。文字通り1秒単位で変わる状況、見た目で受ける印象は数値化できないからです。ということで、一般論ではこうだけど、この患者さんでは難しいだろうね、となってしまうこともあります。それを皆が現場を共有して次の患者さんのために建設的に議論できるようにするためのもの、それがシミュレーション機器です。これから何人・何十人・何百人の命を救う可能性を持っています。
ただし、すぐにシミュレーションが入手できた成果が皆様にわかりやすい形としてお伝えできるわけではないというのが、今回のプロジェクトの難しいところのようにも思います。
「たとえ明日世界が滅びようとも、私は今日、リンゴの木を植える。」
という言葉がありますが(原文には「今日」という言葉そのものはないようですね)、今回に関してはこれほど収穫できるか不透明な訳ではありません。直接リンゴを頂くのは私たち救命センタースタッフですが、出来たリンゴの種から育った果実はいつの日か皆様や皆様の大切な方に届くかもしれません。
という訳で蛇足を長々と書いてしまいましたが、まとめると、「同情するなら・・・」となってしまいます。いや、ちょっとニュアンスが違いましたかね・・・・・・。「未来の外傷診療に賛同頂けるなら・・・」でしょうか、そんな名言はありませんが。
ただし、もちろん、あくまで皆様の生活が第一ですから、くれぐれもご無理はされないように御願い致します。下に詳細を貼っておきますので参照頂ける方はリンクより御願い致します。

▼詳細・ご支援はこちらから
北総救命|最高の救急医療を求め続けるためシミュレーション機器購入へ 
https://readyfor.jp/projects/hokusoh_ccm
第一目標金額:2000万円支援募集期間:8月4日(水)~9月30日(木)23時
2021-09-13 09:21 | カテゴリ:ブログ
皆様こんにちは。忙しいと痩せると信じてましたが、そうでもないということにようやく気付き始めた管理人見習です。口だけダイエットを5年以上継続していますが、継続は力なりという金言も私の前では無力なようです。戯言は置いておいて本題に参りましょう、

それでは、月9ドラマ「ナイト・ドクター」第10話をみた感想を述べさせて頂きます。
当ブログでは初見でドラマを見た(あくまで個人の)感想(見解)を、徒然なるままに(ほろ酔い気分で)書かせて頂きます。皆様におかれましては半信半疑で覗いていただけましたら幸いです。
(※注:以下ネタバレが多分に含まれますのでドラマ未見の方は先にドラマをご覧ください)

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第10話「突如襲う、停電! 朝を迎えられるのか?」
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鳴り響くホットライン「食事中に胸痛を訴え卒倒。胸部大動脈解離疑いの男性の収容依頼です。受け入れ先が見つからず、発症から2時間以上経過しています!」ホットラインに出たそこへやって来る本郷先生。「朝倉、断れ」「冷静に考えろ。発症から2時間以上経過している。平沢界隈から運んでも40分はかかる。ここに着くまで持たない」

これは難しい決断ですね…。このように、例え自病院で受け入れ可能でも、病態を考えて患者さんのことを考えた結果断ることもあります。また、次の患者さんのために断ることもあり得ます。この際に、救急隊の現在地と所要時間はとても大事です。そのため、ホットラインでは○○救急と常に言っていますね。慣れた救急医は、救急隊の名前からどのあたりの地域で搬送までどの程度、というところまで把握しています。もちろん、ドクターヘリ、ドクターカーなどの院外活動でもさらにその重要度は増します。

高所転落の20代患者。救急隊からの情報でかなり重篤な状態であり、救命のためには文字通り1分1秒を争う状況。本郷先生からは15分以内に搬送との指示が。結局救急隊が到着したのは15分より3分オーバー。するとそこへ本郷先生が来て、救急隊員に掴みかかる。
「どうして遅れた?15分以内に運べと言っただろ!」


これは……いつも冷静な本郷先生にしては珍しく冷静さを欠いていますね…。というよりも、さすがに本郷先生やっちゃってるな…という感じでしょうか。早く搬送したい、というのは救急隊も同じく思っていることです。何なら僕らよりも救急隊の方が思っているかもしれません。というわけで搬送時間について、特に数分遅れたということで救急医が怒ることは基本ないと思います。全国の救急隊員を目指している方、搬送が遅れても救急医から胸ぐらをつかまれることは(たぶん…いや間違いなく)ありませんのでご安心を!
まあ、ただですね、到着するのを今か今かと構えて待っている時に限って予定時間よりも遅く到着したり(もしくは遅いように感じたり)、他の患者さんにつきっきりの時に限って予定より早く到着したり(早いように感じたり)、というのは実際ありますが…。たぶん気のせいですけど。

非番でテレビを見ている朝倉先生。レンジでチンしたピザを楽しみに、テレビから流れる台風情報を見ていた。「台風が関東地方に接近し、今夜にかけて猛威を振るう模様です」その瞬間窓の外が光り、雷鳴が轟く。直後停電になってしまう。

出ましたレンジ最強説ですね。温かくて美味しいものがほぼ手間かけずにできるというのは素晴らしいです。文明万歳です。最近で一番感動した発明は、袋がそのままお皿になるタイプの冷凍食品です。管理人見習の冷蔵庫には常に、とある冷凍食品(まぜそば)の同じものが5個以上常備されています。冒頭でダイエットしてる宣言した気がしますが、いいんです。美味しいものは脂肪と糖でできているので仕方ないんです。まあ、とはいっても深澤先生の手料理みたいなご飯とどっちかと言われると深澤先生を選んでしまいそうですが。もちろん救急医に限りませんが、レンジを重宝している救急医は多い気がします。

停電はあさひ海浜病院でも生じていた。病院内は速やかなチェックをした結果、大きな問題はなかったが、他病院からの受け入れ要請が止まらない。いきなり5人の重症患者の転院依頼が。この時点でベッドは満床であり、平時であれば断らざるを得ない状況。しかし本郷先生は「どうするかは、お前達が決めろ。今抱えている患者の状況、稼働可能な機器の数、自分たちの能力、すべてを考慮した上で判断しろ」とのお言葉が。そしてナイトドクターチームが下した決断は、全員の受け入れだった。

さて、いきなりの災害モードです。一番はまず全員で災害モード、ということを共有することです。そして災害モードになると、普段の常識は非常識になりえます。非常識も常識になりえます。まず予防線を張っておくと、災害時の医療について、机上で語ることは不可能です。後から振り返っての最善と、その時との場所での最善は往々にして合致しないことがよくあります。
停電の対処 机上の空論編、を開始いたしましょう。災害であれば多くは病院として対策本部を設立する場合は多いでしょうか。そして転院の調整等は本部で行うことが多いでしょうか。特にCRRT(ざっくりいうと透析のことです)や人工呼吸器など、資源が限られる高度な医療機器のある方の転院は救急外来だけでなく他部署の受け入れ体制を確認する必要があり、外来単独では決められないことも多いです。本部は、一歩引いて俯瞰できるように救急外来の現場とは別の場所に置かれることが多いです。当院でも平時から災害訓練は行っていますが、訓練でもなかなかスムーズに勧めるのは難しいです。日頃からいかに災害を意識するかは大事ですね・・・。

更なる受け入れ要請で鳴るホットライン。「停電により空調が切れ、熱発して状態の悪い透析患者が10名います。そちらで受け入れをお願いできないでしょうか?」駆けつけた朝倉先生とともにこの受け入れも決断する。

季節によっては、停電の際に一番問題となるのは(医療機器の電源問題を除くと)この空調問題かもしれません。それが夏や冬なら、元気な人であれば不便ではあってもうちわや、逆に服を着てしのぐ程度のものかもしれませんが、入院中や具合の悪い人にとっては、暑い寒いというのはそのまま命の危機に直結します。もちろん医療者側も活動効率が低下します。数年前に千葉県で停電になった際には、近隣の病院で暑さ対策にかなり難渋していた記憶があります。
あとどうでもいいことですが、「熱発」という言い方にひっかかった方はいますでしょうか。普通使うのは「発熱」、ですよね。これは実は医療者独特の言い方ですが、場所によっては古いと思われていたり、普通に使われていたり、「発熱」と「熱発」を違う意味として用いていたり、実に様々です。そしてこんな用語はまだまだあります。医療用語、と一口に言っても、医療者の共通言語だけではなく、施設によって普通に使われているのに他の施設に行くと何を言っているのか通じない、ということもよくあります。みなさんが医療者に話を聞くとき、意味がわからない単語があったら是非聞いてください。医療者側は、普段使い慣れすぎてそれが職業用語と気づいていないことも多いと思います。

次々に運ばれてくる患者達を受け入れて、的確に仕分けするナイトドクターチーム。救急外来部門のリーダーは朝倉先生が担うことに。

机上の空論 待望の続編ですが、希望的観測としては朝倉先生がリーダーの位置であれば、直接患者の診察はしないことが望ましいと思われます。木を見て森を見ず、というより、気を見ていたら普通は森は見えません。興味を引く木であればあるほど、周りに他の木があってもなかなか気づきませんし、森の全体像はわかりません。診察や治療は誰かに任せ、朝倉先生がマネジメントに集中するのもありではないかな、と思う日もあります。ちらっと映りましたが、災害では、ホワイトボードや壁面を利用して、経過時間と内容を記していったり、マグネットや図面を利用して状況を整理したりします。技術は進歩していますが、非常時の情報統制は現時点ではアナログの方が意外とまだわかりやすい気もしています。時間の問題ですかね…。

救急隊星崎さんが、電源車からのケーブルを持って入ってくる。星崎さんは「電源車です。本郷先生に用意するよう頼まれて」と。「これでだいぶ持つようになるな」と成瀬先生。

電源車は非常にありがたいですね!ただこれは、私の地域では、おそらく他の多くの地域でも電源車を救急隊(消防)が手配することはないと思われます。電源車が配置されるとしてそれは行政の仕事が主なことが一般的でしょうか。もちろん、どなたからであろうと用意してもらったとしたらありがたく使用させて頂きます。

先日受け入れを断った患者について話す本郷先生。「あの患者の受け入れを断った一件目の病院は、その日の当直が研修医で、対応できるだけの術がなかった。二件目の病院は、担当医師が一人だけで、しかも他の患者のオペ中だった。三件目は、若い内科の医師が当直だった。」

他の病院にたくさん断られた場合は記憶にも記録にも残りますが、自分たちが断らざるを得なかった患者さんは実際に出会えていないためなかなか記憶に残りません。たらればを検討し次に生かすことは大事ですが、たらればで後悔することはあまり実がないかもしれません。それを、自分たちが近隣の病院にいたら受け入れられたのに、というように昇華する本郷先生は素敵だなと思います。

日勤の嘉島先生が出勤してくる。受け入れた患者さんの数に驚く嘉島先生。深澤先生は慌てて「すみません、患者さん多いんで、僕たちもこのまま手伝いますんで」と言ったが、嘉島先生が一言、「ナメるなよ。」「昼間の医者をナメるなよ。これくらい、お前らなんぞの手を借りずとも十分対応できる。今日の夜も、ここには変わらず患者はやって来る。夜間専門のお前達は、さっさと帰って休んでくれるかな」

かっこいい…。いや…今までの全ての嫌味も聞き流せるほどのかっこよさですね嘉島先生。ナイトドクターチームの頑張りが少しずつ認められてきたのでしょうか。もちろん、大規模災害であれば居残り業務ももしかしたら発生したかもしれませんが、やはり寝ていないと判断力が鈍ります。1週間連続で6時間睡眠だと酔っている状態と変わらないという、ウソかホントかあなた次第の情報を聞いたことがあるのですが、本当なんでしょうかね。どなたか調べて頂けるとありがたいです。結果如何では、ブログのタイトルがほろ酔い×ほろ酔い=泥酔感想記になるかもしれません。

待機していたナイトドクターチームのもとへ本郷先生から衝撃の一言。「あさひ海浜病院のナイトドクターチームは、今月をもって、解散することに決まった」

これはほんとに衝撃の一言ですね…。こんな短期間の病院収入で判断してほしくないですね。まあただ、ナイトドクターチームが、1年間ずっと夜間勤務だけなのか、期間を区切るのか、などなど実際に続けていくとしたら興味があるところです。この顛末については次回放送をやきもきしながら待つとします。

なんとついに次回が最終話になってしまいました。そしてなんとナイトドクターチームの解散が告げられて…。本当に解散してしまうのでしょうか。一視聴者としてはもっとチームがみていたいと思うのですが果たして…。