2017-08-01 00:36 | カテゴリ:ブログ
皆さんこんばんは。管理者Oです。

『コード・ブルー ~ドクターヘリ緊急救命~ THE THIRD SEASON』 第3話はご覧いただけましたでしょうか。
おかげさまで、ドラマも当ブログも大反響で、こんな夜中にもかかわらずブログを楽しみにしてくださっている方もいらっしゃると思い、眠い目を擦りながら、必死に書いております(笑)

さて、第3話のテーマは「命より大切なもの」でした。救急医にとっては非常に悩ましい、そしてずっとその答えを模索し続けているテーマです。救急医も一人の人間であり、その人の価値観や倫理観、哲学などは人によって千差万別ですが、作中の藍沢先生が手術後のご家族に「○○さんの体は生きようとしていました。」と説明していたところは、【命から逃げない】藍沢先生らしいセリフだなと感じました。決して自分の手で救ったなどとは説明しない、救急医としての信条が描かれていて、個人的にはとても好きなセリフです。

おっと、また個人的な話をしすぎてしまいました。それではお待ちかねの医療シーン解説です↓

高視聴率でスタートできた「コード・ブルー 3rd season」ですが、この医療シーン解説が一役買っているのであれば嬉しい限りです。第3話の医療シーンも盛りだくさんで、何からお話していいのか迷ってしまいます。

まずはじめは薬物中毒の患者さん(秋本)です。狭いヘリの中で秋本が嘔吐した後、乗員全員が身体の異常を訴えます。冴島はもっとも秋本に近いところにいたためか意識を失ってしまいます。白石が嘔吐物による機内の空気汚染を察知し真っ先に機長にそれを伝えたのは、もちろん飛行の安全を確保するためです。同時に換気のために窓を開けます。さすがは白石。適切な行動でした。現実にも狭いヘリのキャビン内で何かしらの薬物を服用した患者さんが嘔吐をすれば、このような事態は十分に起こりえます。一番怖いのは機長さんが体調を崩して操縦できなくなることです。なので、あらかじめ薬物中毒とわかっている患者さんであればヘリに乗せることはしません。秋本は睡眠薬なども一緒に飲んでいたのかも知れませんが、ごく一般的な意識障害だったので薬物の服用までは予想できなかったのだと思います。
原因となった薬物は、灰谷の言葉をヒントにシアン(青酸)化合物だと判明します。シアン化合物が口、皮膚、気道を経由して体内に入り、細胞の呼吸を傷害させることにより起こるのがシアン中毒です。症状は急激に発現し、特に脳は最も強く影響を受け、死亡率も極めて高いものです。今回はどうして誰も死に至ることはなかったのでしょうか?藍沢も説明をしていますが、秋本はシアン化合物をカプセルに入れて服用しました。その結果、カプセルが胃の中で溶けるにつれて少しずつシアンが体内に取り込まれたため治療を行う時間が稼げたのです。実際にこのような症例が報告されています(日救急医会誌 2013;24:871-6)。ヘリが翔北に着くと「除染」が始まりました。汚染された服を脱ぎ捨て、身体全体を洗って被害が拡がるのを防ぐのが除染です。除染の設備はドラマだから都合よく出てきたわけではありません。日本医科大学千葉北総病院でも、同じ設備が組み立てた状態で準備してあって、すぐに使用できるようにしてあるのです。

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第3話の手術シーンは「ダメージコントロール手術」でした。大量出血時には血液の凝固機能が低下し、どれだけ外科的に出血を止めようと試みても、どこからともなく出血が続いてしまう状態に陥ります。そこで出血部位にタオルやガーゼを詰め込んで圧迫し(パッキング)、一旦手術を中断します。その後、集中治療室で全身の状態を改善させてから手術を再開するのです。私たち北総救命がもっとも得意とする外傷治療戦略です。白石は灰谷に、「ダメージコントロールの一番のポイントは、臆病であること」と伝えます。臆病だからこそ、無理な手術の続行を中断できる、「勇気ある撤退」ができるのです。中断後、患者さんの状態に改善が無ければ手術の完結はできません。その意味で、「ダメージコントロールは、患者さんの生命力に問いかける行為」という藍沢の言葉は、われわれ外傷外科医にとっても面白い視点だと思いました。

最後にもう一つ、ポジティブ思考の料理人、緒方のお話をしておきます。彼は不幸にして「中心性頸髄損傷」という怪我を負ってしまいます。これは、足は動かせますが、手や腕を動かすのに障害があるタイプの頸髄損傷です。手足を動かす神経の束と言える脊髄は、中心部ほど身体の上の方を動かす神経が通っています。なので、脊髄の中心部が損傷するとこのようなタイプになるのです。他にもまだまだ伝えたいことがありますが、今日はこのあたりでオシマイです。

いかがでしたでしょうか。今回の医療シーンは、実際の医療の分野においても非常に稀なケースであったり、意外と知られていない治療概念であったりと医療従事者がご覧になっても不明な点が多かったのではないでしょうか。そうした意味では大変有意義な解説になっていると思います。お時間がある方はこのブログを読んだ後、もう一度ドラマをご覧になってはいかがでしょうか?

さて、第4話も何やら大変なことが起こる予感です。すでに1週間が待ち遠しいと思いますが、楽しみにしていてくださいね。

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