2017-09-18 23:25 | カテゴリ:ブログ
皆さん、こんばんは。管理者Oです。

ついに3か月もの長きに渡り続いておりました『コード・ブルー ~ドクターヘリ緊急救命~ THE THIRD SEASON』がついに終了致しました。最終話はいかがでしたでしょうか?サブタイトルは「暗闇の先にあるもの」でした。翔北救命センターに降りかかった最大の局地災害をチーム全員の力で乗り越え、そして各人がまた新たに示される光を頼りにそれぞれの道を歩み始めましたね。

さて、今回の作中では藍沢Dr.が亡くなった患者の診療のことで後悔する横峯Dr.に「医者は所詮助かる患者しか助けられない。だから助けられる命を確実に救うんだ。」と諭しているシーンが印象的でした。1st seasonで黒田Dr.が藍沢Dr.にかけた「医者が(患者の命を)延ばせるのはほんのわずかかもしれない。だがそのわずかな時間が時に人の運命を変える。そのために医者は腕を磨くんだ。」というアドバイスを藍沢Dr.はちゃんと覚えていたんでしょうね。決して反省をしても意味がないということではなく、むしろその逆で、次に自分が診た際には助かる患者にするんだというメッセージだったのだと思います。
『コード・ブルー』のドラマでも描かれているように救急患者の中にはどんなに手を尽くしても救命できない患者さんがいらっしゃいます。そういった意味では人間の「運命」は決まっているのかもしれません。しかし、実際には患者さんが亡くなるその瞬間まで誰にもその「運命」は分からないのです。だからこそ救急医はその「運命の瞬間」まで文字通り懸命に診療を続け、そして結果が如何なるものであっても、次はもっと良い診療にできるよう努力をしていくのです。
北総救命のコンセプトである【Beyond the theory】には、そんな常に前へ前へと歩みを続けていくんだという理念が込められています。
おっと、最後くらい前置きは短くしようと思っていましたが、やはり書き過ぎてしまいました(笑)それではお待ちかね最終話の医療シーン解説です。今回は最終回スペシャルということで特大号でお届けします↓

「コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」の3rd seasonもついに最終回を迎えました。医療シーン解説もこれが最後?かも知れません。1st season、2nd seasonの頃はSNSも普及していませんでしたし、北総救命もホームページは持っていませんでしたから、このような企画は考えも及びませんでした。今シリーズは、この解説を通してわれわれが伝えたかったことを少しでも沢山の人に理解してもらえたかなと思っています。

さて、最終回は①藍沢+雪村、②藍沢+冴島(+藤川)、③緋山+名取、④横峯+雪村、⑤灰谷+橘の医療シーンが折り重なるように描かれました。もの凄く早い展開でよく分からなかった人も多いと思います。それぞれがどんな展開だったのかを復習してみましょう。
① 藍沢と雪村は骨盤骨折でショック状態の患者を診ていました。地下の事故現場から白石のいる地下1階のコンコース、さらには地上にまで搬送するには、エレベーターもエスカレーターも止まっているためにまだ相当に時間がかかります。シーツラッピングで骨盤の安定化は図れますが、出血の制御を行うために藍沢はここで後腹膜のパッキングをすることを決断しました。この手技については第6回(第5話)の解説でも触れた通りです二度目の崩落でこの上に土砂が降りかかってきました。パッキングしたその上に土砂が降りかかっていました。この患者さんはこの後、創部の感染を合併する可能性が高いのですがパッキングによる止血の方が大切です。この例は稀としても、現場での医療には常に感染のリスクが付きまといます。でも、感染を恐れていては救命できない事例も多くあるのです。われわれの経験では想像しているほど感染を起こすことはありません。
② 藤川が翔君を助けるシーンは、彼の優しさがよく出ている場面でした。崩落の後、彼の下半身は瓦礫に挟まれてしまいました(この現場の医療設定には苦労をしましたが…)。まず、藤川の左大腿部が瓦礫で圧迫されています(写真矢印)。
無題
当然左の下肢は虚血になりますから、この瓦礫を持ち上げたときにクラッシュ症候群による(脈無し)心室頻拍が起こってしまいました(この前に藍沢と冴島はクラッシュ症候群の予防のために、輸液を増やし、炭酸水素ナトリウムも投与して、AEDのパッドも張っていましたね。皆さん分かりましたか?)。
幸いAEDで藤川の心拍は再開しましたが、今度は右足の問題が残ります。画面でもチラッと映っていましたが、藤川の右の下腿には排煙用の金属パイプが乗っていてそれを別の瓦礫が圧迫していました。瓦礫を除けば救出はできますが、今度は圧迫されていた右下腿の虚血によるクラッシュ症候群の出現を食い止めなければなりません。そこで藍沢は、まず藤川の右鼠径部にアクセスして右大腿の動静脈をネラトンで把持して血行遮断を行いました。これによって阻血部からの血流が心臓に還るのを回避できます。しかし、時間の経過とともに右足の阻血は進行します。阻血の許容時間があるのですが、結局、エアジャッキが届いて救出作業が再開された時には病院への搬送時間を残せなくなってしまいました。次の藍沢の判断は、右下肢の圧迫が解除されたと同時に、動脈は開放し、静脈の中枢側(心臓側)は遮断したまま末梢側(足側)を切開し、下肢から還ってくる血液を捨てる(瀉血と言います)という方法でした。藍沢は、出血性ショックをコントロールできなくなるギリギリのところまで瀉血することによって、右足に溜まっていた毒素(カリウムや乳酸など)が心臓に戻るのを回避したのです。
③ 緋山は救命不可能な妊婦、村岡ひとみさんから胎児だけでも救い出そうとします。このような判断をするのは妊娠週数や胎児心拍の状態で決定されます。ひとみさんは妊娠34週でしたので緋山は「イケる」と判断したのでしょう。ひとみさんの心停止後にご主人の村岡正朗さんを説得しながら、緋山は必死の心臓マッサージを続けました。これはできる限り胎児の低酸素血症を防ぐためです。その後、帝王切開で女の子が産まれました。これをPostmortem cesarean section(死亡後帝王切開)と言います。母体への心肺蘇生術の開始から5分以内の娩出が胎児の生存率を高めるとされていますが、心停止から45分後の胎児の救命例も報告されています。この時の帝王切開は極めて迅速に行う必要がありますから、緋山の技術もなかなかのモノだと言えます。
④ 第2話では胸腔ドレーンの挿入も覚束なかった横峯でしたが、今回は蘇生的開胸術を行いました。レスキュー隊員の佐藤さんは出血性ショックを伴う大量血胸でした。「開胸して出血点を探せ」という藍沢の指示は間違っていませんし、彼がその場にいたら迷わずそうしていたに違いありません(これまでにもそのようなシーンは多くありましたね)。一方で、暗い中での開胸はかえってリスクを高めるかも知れません。この時に横峯が取った判断も確かに合理性はあります(後の横峯の台詞からは、やりたくない理由を言っただけだったかも知れませんが…)。佐藤さんには上行大動脈瘤の存在が判明しましたから、そんな人の胸部外傷です、実のところ救命は困難だったでしょう。患者さんの既往歴が結果に影響を与えることは、“待ったなし”の救急医療ではよくあることなので、それ自体を医師が気に病む必要はありません。ただ、横峯は自分の判断を後悔する中で「一瞬の判断が生死を決することがある」、そんな救急医の現実を経験したのだと思います。
⑤ フライトドクターとしての自信を失いかけていた灰谷でしたが、見事に山田賢治さんを救命します。この患者さん、最初は両側の大腿骨骨折によるショックでしたから、橘も灰谷もその対応を優先しました。その後、出血が無いにもかかわらず進行するアシドーシスやVTの出現は説明がつきません。第8話の川田慎一君の時もそうでしたが、彼は何か納得がいかなかったときは患者さんの傍から離れません。この姿勢は若い先生方にも是非、真似をして欲しいと思います。ついに灰谷は山田さんの電撃傷に気がつきました。電撃傷は電気抵抗の低い皮下組織、筋肉、血管、神経などに通電して生じます。皮膚所見が乏しくても(確かに擦過傷のようにも見えました)腹壁の筋肉が広範に壊死を起こしていることがあります。腸管損傷は稀なのですが、診断が遅れれば腹膜炎になってしまいますから見落としは許されません。何か一つの怪我や病気を診断して安心をしてはいけません。複数の疾患が重なり合っていることもしばしば経験します。これが救急医療の難しさですが、面白さでもあるのです。この症例を救命できた灰谷は、自分で思っている以上に救急医に向いているようです。

蒔田中央駅地下1階のコンコースにいた白石は、DMAT(災害派遣医療チーム)や近隣から駆けつけた医療関係者達と救助された人達への医療対応の指揮を執っていました。こういった災害現場では「消防」や「警察」が独自に現場指揮本部を設けます(もっと大きな災害であれば「自衛隊」も加わります)。一番の欠点は、これらに「医療」を含めた“統合的指揮本部”やその“長”が存在しないことです。被害に遭った人達には真っ先に医療が提供されなくてはなりませんから、このような場面では医師がもっと積極的に関与すべきだと思います。白石は今回の事故現場では具体的な医療行為は行いませんでしたが、彼女は「医療提供の長」としての役回りを務めていたわけです。

最終話の「医療シーンのこだわり」を、今日は特別に2つ紹介したいと思います(写真)。
無題2
一つはトンネルの崩落事故現場のセットです。写真は緋山の現場で、右側の奥は藤川がいた現場の方向です。実際のトンネルの中に崩れ落ちたコンクリートや瓦礫を積み上げて作成されています。もう一つは藤川の左上腕骨の徒手整復をする際に鎮痛薬として藍沢が使った「フェンタネスト」という麻薬です。
無題3
ほとんど画面には映ってこなかったかも知れませんが、美術スタッフさんはそのアンプルまで正確に作ってくれました。中身はただの水ですが、これを持ち歩いていると「麻薬」を所持していると勘違いされてしまいそうです。大がかりなセットから細かい小道具まで、美術スタッフの底力を感じた4ヶ月間でした。

ついに最終話の医療シーン解説もこれで終了です。インターネット上では、医療シーンについて多くの批判もあるようです。その一つ一つに反論をするのは不毛ですから何も言いません。ドラマはあくまでもエンターテイメントであって現実のコピーを作っているわけではありません。そのエンターテイメントにリアリティーを与えるのがわれわれの役目と心得て、「コード・ブルー」の医療監修を行ってきました。医療シーンでは演出上の制約以外、説明のつかない部分は一切無いと言い切れます。この解説が「コード・ブルー」を楽しんで観ていただける一助になったのであれば、とても嬉しく思います。3ヶ月間、お付き合いいただきありがとうございました!


~急告~
「コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」の映画化が決定しました!
それに合わせて、「医療シーン解説映画版」の公開も決定しました!
お楽しみに!


いかがでしたでしょうか。前回のブログでも述べましたが、管理者の予想を大幅に上回る反響に当初は戸惑いましたが、そんな皆様のおかげで何とかここまで続けてくることができました。叱咤激励のお言葉を頂きました方々、本当に3か月間当ブログをご覧頂きまして誠に有難うございました。今後は、北総救命の日常を含めてドクターヘリのことや救急医療のことなどを折を見てアップしていきますので、引き続き応援のほど何卒宜しくお願い致します。
………と思ったら、なんと2018年に映画化決定!!!
またその際は、医療シーン解説ブログを書きたいと思っています。
そんなわけですので、皆様また少なくともまた来年にはお会いしましょう☆

管理者のみに表示する

トラックバックURL
→http://chibahokusoh.blog.fc2.com/tb.php/155-2a7614ec